貴方に恋したわたしを馬鹿にする人がきっと沢山居るでしょう。
だって彼らは貴方を知らないから。
彼らから見る貴方は、野蛮で危険な化け物なのかもしれない。
けれどそんなのは一年のうち十数回の夜。
三百と少しの日の貴方はとても優しい男の子です。
誰よりもわたしを愛してくれる男の子です。
どんなに恐ろしいものからでも、必死なってわたしを守ってくれる、
とても勇敢な無敵の騎士です。
たとえ茨に包まれたお城の中へでも、その剣を振るいわたしを傷付けることなく踏み入って来てくれる、
大切な白馬の王子様です。






貴方との恋は


きっと


御伽噺にはならないけれど







は本当にリーマスが好きなのね。」

 わたしの話しを聞いていたリリーが、頬を染めながら柔らかく笑ってくれた。 そんなリリーを見ていたら、自分がどれほど恥ずかしいことを語っていたのかと、 自分の頬も赤く染まっていくのを感じた。
 リリーと二人で笑い合って、小指を絡めてこの話を秘密のお話にする約束をして談話室に下りれば、 そこには思った通りわたしたちの想い人たちが居て、二人して恥ずかしい気持ちになって忍び笑った。 けれど耳ざとい彼らはそれを聞きつけて、鳶色の髪と黒色の髪の毛がふわりと揺れてこちらに振り向く。 小さく手を振れば、どちらとも恐ろしいほど優しい笑顔。リリーと二人でもう一度笑った。

「何を笑っていたんだい?」

 リリーとジェームズはホグズミートへ、わたしたちは談話室へ残った。満月も近い日。リーマスの体調を考えてのこと。

「秘密よ。」

 女の子だけのね。そう付け加えるとリーマスは残念そうに笑った。 けれどその笑顔も幸せそうに見えてしまうのは、わたしが彼といる時にこの上なく幸せだからだろか。 もしかしたら彼はわたしと居る時に幸せじゃないんじゃないだろうか、 そんな風に考えるけど、悲しい考え方よりもずっと幸せな考え方をしたいといつも感じた。 だからわたしは彼が微笑んでわたしが幸せな気持ちになる度に、その度に彼を愛してると心で言うことにした。 そんなことを知らない彼が、自分の中で恥らって頬を染めるわたしを覗き込んで不思議そうな顔をしていた。 けれど微笑み返せばまた笑い返してくれた。

「ドキドキも大切だとは思うのよ。」

「ん?」

「恋に、」

「ああ。」

 そうだね。ふんわり笑われてしまって、心の中が温かくなっていく。
 リーマスとは随分喧嘩もした。 わたしたちだってまだまだ若くて、融通が利かなくて相手を尊重し続けることは無理に等しい。 けれどそれはきっと一生無理なことで、今の自分たちが愚かなわけじゃないと思ったのはいつからだろう。

「でもね、いつもドキドキしていたら大変じゃない?」

 わたしが言うと、彼は面白そうに笑った。目の前にある甘すぎる紅茶を一口。 彼が自分のものよりは控えめな甘さで淹れてくれた紅茶。だけどやっぱり甘い。 この紅茶を普通に飲めるようになった日はいつだっただろうか。 手渡されるチョコレートの甘さに慣れて、チョコレートを見ると少し幸せな心地を思い出すようになった日は?

「ドキドキが沢山だと直ぐに疲れて諦めたくなっちゃうわ。」

らしいといえばらしいよね。」

「だからね、わたしはリーマスが好き。」

「僕もだよ。」

 同じ事を考えていないかもしれない。上手く伝わっていないかもしれない。 けれどきっとリーマスなら大丈夫だって思える。
 柔らかい日差しの中で午後のお茶会を開くなら、やっぱりリーマスとがいい。 朝起きた時におはようと言い合うのも、冬の雪の日に暖炉の前で肩を並べて温まるのも、 夕食のあまり好きじゃないおかずを分担して食べるのも、 分からないところを一緒に調べるのも、笑い合うのも、通じ合うのも、キスをするのも。 やっぱりいつもとなりにいるのならリーマスがいいと思った。

「わたしね、一緒に死ぬならリーマスがいいと思ったのよ。」

 幸せそうに笑えただろうか。きっと心が幸せだからとても幸せそうに笑えただろう。 リーマスは至極嬉しそうに微笑んでわたしにキスを一つくれた。だからきっと上出来だったに違いない。

は本当に僕を幸せにしてくれるね。」

 距離にして数センチ。吐息が掛かる程しか離れてないのにもう一度キスを。
 幸せで幸せで涙が出そうだったけれど、幸せな時は幸せな顔をしていたいから、そういう心のまま微笑んだ。 唇が離れて見詰め合った彼の顔も、そういう顔で微笑んでいた。



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ハッピーエンドにオチがつけれない人です。