わたしの事情と火の悪魔



 その後、マルクルから質問攻めにされるも、わたしの方が知りたいことだらけで応えることができなかった。 辛うじて私が答えられたことは、名前と、今までいた場所、眼が覚めたら此処に居たこと。 それからどうやらわたしはこの城と呼ぶには余りにも惨状なこの家に住むらしいということ。それくらいだった。
 それ以外の事で今分かっていることはハウルが説明してくれた。 どうやら私は帰宅直後のハウルの目の前に突然現れたらしい。 その後、いったい何をしたのか計り知れないが、何をしても目覚めず、途方に暮れたところでわたしが目覚めたとのこと。 とりあえず頬が少し痛かったことから推測するに、叩いた可能性は高い。映画の中では紳士だった彼だが、目の前の彼はそうでもないのかもしれない。

「それはきっととっても驚いたでしょうね。」

 思わず遠い目をして言い放てば、ハウルが少し困ったように笑いながらごめんと言った。

「え?」

「あんな態度とってごめんって。」

「いや、あれは普通かなーって思いますよ?」

「うん、でも事情も聞かずにあんな風にしてごめん。きっと君だってちんぷんかんぷんで不安だったろうに。」

 別にいいんだけど、でもちょっとだけ紳士的な彼に恥ずかしくなる。映画とは違ってアニメーションではないけれど、 彼はそれは見事な容姿をしていた。どこをどう取っても美系。美青年。こんなにも綺麗な人間っているんだなぁ、と惚れ惚れしてしまう。

「荒地の魔女の手下かと思ったんだよ。」

「わたしがですか?」

「うん。」

「何故ですか?」

 んー、なんて間延びした返事を返しながら、ハウルは食後のコーヒーを淹れてくれた。 鍋を載せると普通のコンロみたいになるカルシファーを見て、火力調節までしてくれるなんて画期的だと思ったのは言うまでもない。

「その話をする前に、。」

「はい?」

「敬語禁止。最初は普通に喋ってたじゃないか。」

 それは状況が掴めずに、混乱した脳みそのせいです。 そんな風に言おうとしたけれど、ハウルは、それじゃぁ話すね、と言って、わたしに意見を述べる間は与えてくれなかった。



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