「魔力があったんだ、始め。」

「わたしに!?」

「そう。いきなり目の前に現れた君から、微かだけれど魔力を感じたんだ。でも君が目覚めて少し経ったら消えてしまったよ。」

「なんだったんだろう?」

「なんだろうね。」

 困った風な顔も整っていて少し劣等感が生まれる。でもなんだかそんな自分さえ馬鹿らしくなる程美系のハウル。 予想していた以上に恰好いいから少しどぎまぎしてしまう。

「それに、」

 そう続けたハウルだったけれど、しばらく待ってもその先の言葉が出てくることは無かった。 彼はジッとカルシファーを見詰めていて、その顔は先ほどには劣るけれど真剣なものだった。 きっとわたしに対して感じた何かについて考えているんだろう。 魔力よりはどうでもいいことなのか、それとも魔力以上に気になることなのかはわたしには分からない。 何について考えているのか気になったけれど、 きっと聞いても答えてくれないだろうということは予測できた。 これから此処に厄介になるのだから今回は妥協しておこう。

「さぁ、僕は出かけるとしよう。」

 そう言って立ち上がったハウルは急いで準備に取り掛かっていた。 いつもなら長風呂らしいそれを早々に済ませて、着替えもして、マルクルに課題をだして、わたしに家に居るように言い付ける。 そして颯爽と扉の向こう側へ消えていった。戦争を見に行くのか、それとも女の子を口説きに行くのか。 そもそも戦争ははじまっているのだろうか。今、わたしは物語のどのあたりに居るのだろう。

 わたしを元の世界へ戻せないのか。それをハウルに問いたい半面、なぜか口に出すのが怖い。 もしかしたらふとした瞬間に、此方へ来た時と同じように寝ているうちに戻るかもしれない。 今はまだ戻れる気がして居ないけれど、それはきっと今の状況に混乱しているからで、 もう少し経てば帰れると感じられる時がくるに決まっている。 ハウルに言うのはその時だって遅くは無いわ。そんな風に自分に言い聞かせた。



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